事前学習:第2章 放射線量の定義と相互作用係数
この章は、主任者試験で「言葉は似ているけど対象が違う」問題がよく出ます。
まずは 何を表す量か、どの放射線に関係するか、単位は何か の3点で整理しましょう。
1. 放射線場量:まず「場」を表す
放射線場量(ラジオメトリック量)は、物質や人体への影響ではなく、その場所に放射線がどれだけ存在・通過しているかを表す量です。
代表は
粒子フルエンスφ と
エネルギーフルエンスψ です。
- 粒子フルエンス φ:単位面積あたりを通過する粒子数。単位は m-2。
- エネルギーフルエンス ψ:単位面積あたりを通過する放射線エネルギー。単位は J・m-2。
- 単一エネルギーなら ψ = Eφ と考える。
ひっかけ:フルエンスは「線量」ではありません。吸収線量や照射線量とは分けて覚えます。
2. ドシメトリック量:物質とのエネルギー授受を表す
放射線量(ドシメトリック量)は、放射線が物質に与えるエネルギーや電離を評価する量です。
- 吸収線量 D:物質1 kgあたりに吸収されたエネルギー。単位は Gy = J・kg-1。
- 照射線量 X:X線・γ線が空気中に作る電離電荷量。単位は C・kg-1。
- カーマ K:光子・中性子などの非荷電粒子が、二次荷電粒子に移した運動エネルギー。単位は Gy。
- シーマ C:電子・陽子などの荷電粒子が物質に与えるエネルギーに関係する量。
覚え方:カーマ=非荷電粒子、シーマ=荷電粒子。照射線量は光子+空気の電離。
3. 相互作用係数:放射線と物質の反応しやすさ
相互作用係数は、放射線が物質とどれくらい相互作用しやすいかを表します。
- 線減弱係数 μ:光子が単位距離あたりに減弱する程度。単位は m-1。
- 質量減弱係数 μ/ρ:線減弱係数を密度で割った量。単位は m2・kg-1。
- 質量エネルギー転移係数 μtr/ρ:光子から二次電子へ移される運動エネルギーに関係。
- 質量エネルギー吸収係数 μen/ρ:制動放射で逃げず、物質内に吸収されるエネルギーに関係。
- 断面積 σ:1個の原子・原子核・電子などを標的として見た相互作用の起こりやすさ。単位は m2。
ひっかけ:μは m-1、μ/ρ は m2・kg-1。単位で見分けると強いです。
4. 荷電粒子に関係する量
電子線、陽子線、α線などの荷電粒子では、物質中で直接電離・励起を起こしながらエネルギーを失います。
- 阻止能 S:荷電粒子が単位距離あたりに失うエネルギー。
- 質量阻止能 S/ρ:阻止能を密度で割った量。
- 衝突阻止能 Scol:軌道電子との衝突による電離・励起に関係。
- LET:荷電粒子が単位距離あたりに物質へ与えるエネルギー。単位は keV・μm-1。
よく出る対応:阻止能・質量阻止能・LET → 荷電粒子。カーマ・エネルギー転移係数 → 非荷電粒子。
5. W値:気体検出器にもつながる重要量
W値は、気体中で1対のイオン対(電子と正イオン)を作るために必要な平均エネルギーです。
- 単位は eV または J。
- 気体中の電離量から線量を求めるときの基礎になります。
- W値は「電離エネルギーそのもの」ではなく、励起なども含めた平均エネルギーです。
過去問では「W値 ― X線」などが出ますが、直接の考え方は「電離・荷電粒子・二次電子」と結びつけます。
6. 電子平衡とビルドアップ
光子線では、光子そのものではなく、光子が作った二次電子が線量に大きく関係します。
- 電子平衡:ある領域に入る二次電子と出ていく二次電子がつり合う状態。
- 表面付近:外側から入る電子が少ないため、電子平衡が成立しにくい。
- ビルドアップ領域:表面から電子平衡が成立するまでの領域。吸収線量は深さとともに増加しやすい。
- 過渡電子平衡:現実の光子線のように減弱がある条件で、局所的に電子の出入りが近似的につり合う状態。
- 電子平衡下では、吸収線量 ≒ 衝突カーマ とみなせる場合があります。
主任者試験では「電子平衡が成立しにくい場所」「ビルドアップ」「カーマと吸収線量の関係」が狙われます。
7. 過去問で狙われる対応まとめ
| キーワード | 結びつける対象 | 注意点 |
| 照射線量 | X線・γ線、空気、C・kg-1 | 電子線やα線ではない |
| カーマ | 光子・中性子など非荷電粒子 | 単位はGy |
| シーマ | 電子・陽子など荷電粒子 | カーマと対にして覚える |
| 阻止能・LET | 荷電粒子 | γ線や中性子そのものとは直接結びつけない |
| 質量エネルギー吸収係数 | 光子 | 吸収線量評価に関係 |
| W値 | 気体中の電子・イオン対 | 単位はeVまたはJ |